インプロとは

インプロは創造性をあなたに与えない。

しかし、あなたの中にすでにある創造性を掘り起こす手伝いをする。

何もないところから物語を創造していく即興演劇は「インプロ」と呼ばれ、欧米を中心に世界中に広まっている。劇場やライブハウスで上演され、観客達を笑わせたり、感動させている。

インプロは、それぞれの人が好き勝手に思いついたことをやる「でたらめ」ではない。それぞれの人から生まれたアイディアを、お互いに受け容れ合い、ふくらませていくことで、初めて今まで誰もつくったことのない新しい物語を生み出すことができる。そのためには、アイディアを生み出し、受け容れ、発展させるための方法論が必要である。

しかし、生み出そう、受け容れよう、発展させようと「頑張って」も、その通りにできないところがインプロの難しいところであり、面白いところである。「頑張る」のをやめ、自然に任せることで、かえってうまくいくこともある。

インプロの創始者の一人、キース・ジョンストン(keith johnstone)がインプロの方法論をゲームやアクティヴィティーの形で蓄積していったのも面白いところだ。インプロのワークショップで、参加者達はこれらのゲームやアクティヴィティーを実際に体験し楽しみながらインプロの方法論を学んでいる。

そして、今や、インプロは劇場を飛び出し、一般の人々もインプロを楽しみ、インプロを学ぶようになってきている。

  (高尾隆著『インプロ教育:即興演劇は創造性を育てるか?』より)

普通にやる・頑張らない

独創的にならない・たりのことをする

くならない

とうとしない

自分めない

想像責任をとらない

 

名言

■Don’t be prepared. (準備しない。)

日常生活で、人は未来を予測することは出来ません。次の瞬間に何が起こるのか、自分が言ったことをどう返されるか、相手に何を聞かれるか、全てにおいて、何が起きるのか判らないのです。しかし、即興者は、「未来をコントロール」しようとします。「良いアイデア」を求めて、あるいは、間違いを避けようとして、前もって考えてしまいます。即興者が、より大きな安全を求めて前もって考えると、自分の頭の中が自分の考えでいっぱいになり、シーンの中で、何が起こっているのかを見逃したり、自発性を殺してしまったりします。

■Give your partner good time. (パートナーに良い時間を与えよう。)

自分自身が目立ったり輝くのではなく、相手を輝かせるためにサポートすること。良いシーンとは、相手がいかに気持ち良かったかということなのです。

■Let go of failure / Make mistakes (思いっきり間違えよう!)

即興では、台本がありません。だから、失敗はないのです。「失敗した」と感じるのは、上手くやろうと思っているからです。自信を持って思いっきり間違えれば、お客さんはそれを楽しんでくれます。 しかし、間違えたことを気にして内にこもったり、ごまかしたり、言い訳をしたりすると、お客さんは離れていってしまいます。シーンが上手く進まなくても、あなたが輝いていれば、お客さんはあなたを愛しく思うでしょう。

■Let your partner change you. (パートナーにあなたを変えさせよう。)

即興役者は、変わることを避けがちです。特に初心者は、相手に変えられることと、負けることを同等に思います。そのため、相手の事に気付かなかったり、よく聞かないでペラペラしゃべたり、そのままで居ようという必死の思いの中で相手のアイデアを殺したり(Block)、バカげた事や、突飛なことを言う(Being Original)でしょう。しかし、あなたが変えられることがなければ、何も起こらないし、劇的にもなりません。観客は、他の人によって変えられてしまう人間を見たいのです。

■Something boring right away, but inspire your partner.
(何かつまらないものをすぐに。でも、パートナーをインスパイアしよう。)

「”Something Wouderful Right Away”という本があるけど、私だったら、”Something Boring Right Away”にする。そして、その後に、”But Inspire Your Partner”を付けるだろう。」どみんごが、Keithにインタビューした時の一言です。”Something Wouderful Right Away”とは、有名なインプログループ、The Second Cityで活躍した人々のことが書いてある、The Second Cityの歴史の本。Keithの言葉には、Keithのインプロに対する哲学が込められていると思います。

観客に対して、楽しませようと頑張ったり、媚びたりするのではなく、とにかくすぐに、つまらなくて良いから何かする。その時に、一緒にやってる人が、何か刺激を受け、インスパイアされるものを心がける。そうすれば、自然とシーンはつながっていき、役者たちはそれぞれ居心地よく舞台にいられ、結果として、観客は楽しい時間を過ごすことが出来ます。目の前にいる、たった一人を大切にすることは、観客全てを大切にすることと同じことだからです。

 

キーワード

■Accept (アクセプト)

オファーを受け容れること。「Yesマン」ではありません。積極的に受け容れることが大切です。Kiethが提示している「シーンを壊すよくあるテクニック」は、現在、17個あります。(「Impro for Stotytellets」p101より)完全な否定は「ブロッキング」ですが、アイデアを受け容れている様でも、態度や感情、行動で否定している場合があります。キャラクターやシーンの構成に必要ならば良いのですが、大抵の場合、舞台上での見られる恐怖のために、役者の普段の癖や習慣などが無意識に出ていることがほとんどです。完全にアクセプトすることが出来ない時は、無理せず、はっきり「ノー」と言えば良いのです。

B

■Being there (そこにいること)

「Being there」とは、「そこにいること」です。もっと具体的に言うと、「役者が役として、今、この瞬間に舞台上に存在している」ということ。これは、役者ならば出来て当たり前だと思われるかもしれませんが、とても難しいことです。

たとえば、テーブルを拭く演技。シーンの前の休憩中に拭いたテーブルは、とてもきれいに拭けています。しかし、シーン中に拭いたテーブルには、ほこりが残っていたりして汚れています。つまり、シーン中、テーブルを拭く演技をしていたとき、本当に拭いてはいなくて、ただ拭くまねをしていたということです。このように、即興役者は、緊張や焦りのため、演技がおざなりになってしまいがちです。

「役者にとって、舞台は怖い場所である」と、キースは常に、何度も言っています。そのため、キースは、即興役者がおちいってしまいがちな問題点を改善する、数多くのゲームを作りました。インプロはそうやって、キースが直面して来た、様々な即興役者たちの問題点を改善しながら出来上がってきたものです。ですから、シーンが上手く行かなくても、心配いりません。その時は、問題点に合うゲームを選び直せば良いのです。

■Be average (がんばらない)

誰でも、ベストを尽くそうと頑張ってしまいますが、それでは、本来の力を100%発揮することは出来ません。無理をすると、体に力が入ってしまいます。「Spontaneity」「Good nature」といった状態になるには、「Be average」こそがベストなのです。

C

■Contact (コンタクト)

「接触」と訳されますが、人や物に直接触れること(タッチング)だけでなく、アイコンタクトや精神的なつながりなども含みます。また、どのくらいコンタクトするのか、というウェイトを変化させることが出来ます。コンタクトすることで、相手の状態を知ることが出来、また、自分の状態をさらけ出すことになります。それが言葉以上の効果となって、お互いの信頼感を強めるのです。

■Control (コントロール)

コントロール。辞書では、「支配・制御・操縦」なんて出てきます。人は、誰でも、自分のことは自分でコントロールしています。コップの水を飲む、お財布からお金を出す、冷蔵庫を開ける…。それに慣れているので、そのコントロールを失うことは、すごく不安です。また、舞台の上では、「観られている」という恐怖から、自分だけでなく、さらに自分以外のこともコントロールしようとしてしまいます。つまり、コントロールの対象には、自分と、自分以外の二つあるのですが、どちらの場合も、コントロールの仕方次第で、色々な問題が起きます。コントロールを誰か特定の人だけが行ったり、逆に、誰もコントロールしなければ、シーンは上手く進んでいきません。コントロールをシェアして、誰もが平等に責任を負うことが大切なのです。

■CRAW/CROW (クロウ)

C  ・・・ Character (キャラクター)

R  ・・・ Relationship (関係)

A/O ・・・ Action/Objective (行動/目的)

W  ・・・ Where (場所)

即興のシーンを作る時、プラットホーム(設定)をきちんと作ることが重要です。その時、このCRAW(CROW)を意識して作ると、シーンを進めやすくなり、ストーリーを作るのに役立ちます。

D

■Dance (ダンス)

即興役者が踊る場合、ダンサーではないので、テクニックは重要ではありません。何よりも重要なのは、「ソウル」と「顔」です。ミュージカルの集団ダンスでは、とにかく笑顔。ヒップホップなら、力の抜けたカンジ。タンゴではキリッとした顔つき・・・、といった具合に、ダンスのイメージに合わせて踊ります。そして、しっかりと自信を持って踊るのです。「ソウル」と「顔」さえしっかりやれば、ダンスとして成立します。役者は、その役として踊るのです。キャラクターとして、そのシーンに存在することが大切なので、どんな踊りを踊るかは重要ではありません。なんといっても、即興なので、振りを忘れる、といった心配はないのです。

■Directing (ディレクティング)

演出することです。インプロでは、シーンは即興で行われます。役者だけでなく、演出も、照明も、音響も、シーンに関わる全ての人は、インプロヴァイザーである必要があります。インプロヴァイザーには、役者・脚本・演出の3つの役割が課されます。演出の役割を切り離すことで、役者の仕事が減り、楽になります。また、ディレクターが、シーンの出来の責任を負うので、初心者の場合、ディレクターが付く方が安心して演じられます。

ディレクターは、役者や、ストーリーの流れを見て、「シーンを良くする」ために、演出を行います。ディレクターだけが作りたいシーンを作るのでは、インプロの意味がありません。また、ディレクティングを学ぶことは、インプロを教えるためにも、とても役立ちます。

■Driving (ドライビング)

他人をコントロールすることです。訳すると、「運転する」という意味です。車の運転をする時、全て、運転手の思い通りに動かしていますね。そうしないと、事故を起こしたりするかもしれません。必然性のあるコントロールは必要です。でも、無理強いをしたり、押し付けたり、不可能なことをやろうとしたり。必要以上のコントロールは、相手に不快感を与えます。そうすると、相手は反発し、反撃するでしょう。親の過度の期待に反抗したことはありませんか?全てを決められてしまうと、考える余地がなくなり、自由が奪われます。

E

■Endowments (エンダウメント)

見做す《みなす》こと、つまり、決めつけることです。全てのものに対して行うことが出来ます。自分、相手、物、場所…。そして、さまざまなエンダウメントが出来ます。感情、関係、ステータス…。「エンダウメント」を行う効果は、シーンにキネティックダンス(シーンの自然な流れ)を生むことです。

もしも、自分のことだけをエンダウメントしていたら、それぞれの役者は、バラバラに動き、シーンとも関わらないでしょう。そこには、「面白い人」「セクシーな人」「臭い人」といったキャラクターを演じている役者がいるだけです。そうなると、キネティックダンスは止まります。自分以外の人や物にエンダウメントすることで、反応が変わり、キネティックダンスが起こるのです。

F

■Filler Game (フィラーゲーム)

「Filler」とは、間を埋める・詰め物といった意味で、「Filler Game」は、間を埋めるゲームということになり、能と狂言での「狂言」、テレビで言えば、ドラマとCMの「CM」に当たります。シーンを作るゲームの間に、ちょっと息抜きをさせる、笑いを誘うような面白おかしい余興のゲームが、「Filler Game」です。「Filler Game」ばかりでは、テンポが早くなり、内容がなくなるので、観客に飽きられやすくなります。しかし、シーンが長くなれば、観客の集中力が持続しません。シーンを作るゲームと「Filler Game」をバランス良く盛り込むことで、ショーを盛り上げ、観客の興味を引きつけることが出来ます。

G

■Gibberish (ジブリッシュ)

ジブリッシュとは、でたらめ語のことです。「何言ってるか判んないよ。」と言うとき、英語では、「You speak Gibberish.」というそうです。ジブリッシュでは、言葉で伝えることが出来ないので、言葉以外での表現に頼ることになります。すると、必然的に、ストーリーを言葉なしで作ること、相手と関わり合うことが出来るようになり、舞台の上で落ち着いていられるようになります。ジブリッシュを使うとき、話し手よりも、聞き手側のリアクションが重要です。聞き手が無反応だと、ジブリッシュを話している人が浮いてしまい、関わり合うことが出来ないからです。

■Good nature (グッドネイチャー)

natureとは、「本質」「性質」という意味で、「Good nature」とは、「人間性の良さ」「人となりの良さ」という意味です。それは、誰もが持っている、その人自身のかけがえのない宝物です。「Good nature」な状態では、役者は、何からも自由で、「何かをしなきゃ」というプレッシャーがなく、舞台の上で恐れるものが何もありません。リラックスして、全てを楽しんでいます。

人は大人になるにつれ、社会や人間関係を上手く生きていくために、様々なテクニックを身につけます。しかし、それは「Good nature」になるのを邪魔します。キースは「鎧」と呼んでいますが、「仮面」の方が、想像しやすいかもしれません。周りに求められる「良い人」や「良い子」、「元気な人」を演じたり、「教師」や「医者」などの社会的立場に規制されていたり。

偽りの自分ではなく、本当の自分を見つめること。それを、押さえたり、ごまかしたり、言い訳したりすることなしに、ありのままに出すこと。即興演劇を見に来る観客は、「Good nature」な役者を見に来るのです。役者のテクニックの巧さや、ストーリーの出来不出来、ショーの質は、二の次なのです。

I

■IN & OUT (イン・アウト)

マスクのキャラクターに入り込んでいる、トランス状態がIN、「何をやってるんだろう?」と素の自分になっている状態がOUTです。これは、マスクを使った場合だけでなく、普通の演劇をやっている時にも起こっていることではないでしょうか?マスクの場合、完全にINであれば、その場に生きることが出来ます。しかし、マスクが何をするかは判りません。OUTであれば、自分でどう動くかコントロールすることができますが、マスクのキャラクターとは出会えません。INになることが良いのではなく、自分が今、どちらの状態なのかを意識すること。INだとしても、その割合が80%くらいだったり、20%くらいだったり、といったこともあります。また、INになったままでは、役が抜けきれず、日常生活を送るのに支障が出ます。OUTであることを実感するのも、大切なことです。

K

■Kinetic Dance (キネティックダンス)

「Kinetic」とは「活動的な」という意味です。人間の日常生活では、全ての事柄にキネティックダンスが起きています。

例えば。ご飯を食べる時は、利き手にお箸を持ち、反対の手にお茶碗を持ち、口に運ばれたご飯を食べるめに口を開きます。また、電車の中、座っている人が降りるために立ち上がると、前に立っている人は少し下がり、空いた席に誰かが座る。このような無意識な行為だけでなく、感情もまた、影響します。苦手な人の家へ訪問する前、玄関の前で深呼吸したり。好きな人の前で上手く話せなかったり。ライバル同士が、相手を出し抜こうと争ったり。

これらのダンスは、日常的に起きているのです。しかし、舞台の上に立った時、即興役者が、それぞれに異なった考えで演技をすると、キネティックダンスは、ほとんど確実に「閉じ込め」られます。自分の演技プランのことや、先の事で頭の中がいっぱいになると、ダンスは消えてしまうのです。

M

■Mask (マスク)

マスクとは、狭い意味では、仮面そのもののことです。キャラクターの作り方には、大きく分けて、内側から作る方法と、外側から作る方法があります。内側から作る方法は、演じる人物の内面を分析し、感情を作り、それを演技に表す、という方法です。一方、外側から作る方法は、姿勢や動き、衣装、メイクなど、外からの刺激から、内面を作っていくという方法です。例えば、和服を着ると、普段より上品な振る舞いになったり、セクシーなメイクや服装をすると、普段より大胆になったり。広い意味では、この外側からキャラクターを作る方法もマスクと呼んだりします。

O

■Offer (オファー)

Anything an improviser says or does on stage.

—Glossary of BATS’ Improv Term

即興者が、舞台上で言ったりやったりしたこと全て。

Closed Offer : はっきりと決めてしまうオファー

Open Offer (Blind Offer) : はっきりとは断定しないオファー

P

■Permission (パーミッション)

「許可」という意味です。人は、多かれ少なかれ、自分で自分に制限を掛けて生きています。「公共の場で大きな声を出してはいけない。」「失敗してはいけない。」「間違えてはいけない。」などなど、そういった制限は、社会で生きていくために必要なものもありますが、自分を不自由にしているものでもあります。ワークショップという場では、ファシリテーターが率先して間違え、それを楽しむことが、参加者に「ここでは、間違えてもいいんだ。失敗してもいいんだ。」という安心を与え、それがパーミッションになります。

また、マスクでは、言葉ではない、音としての声を出すことで、普段の自分とは全然違う、マスクのキャラクターになるパーミッションとなります。そして、マスクを誘導するリーダーが、強く「~してはダメ!」ということで、「~しても良い」というパーミッションになります。相手の抑圧が強ければ強いほど、強く反抗出来るからです。しかし、それには、前もって「この場では、この人には、それをしても良い。」という信頼関係を作っておくことが必要です。

■Positive / Negative (ポジティブ:積極的 / ネガティブ:消極的)

ポジティブ・ネガティブとは、状態を表す言葉です。インプロでこの言葉を使う時、4つの対象があります。一つは、役者自身の状態。もう一つは、キャラクターの状態。そして、シーンの状態。最後に、ストーリーの内容。しかし、これらは混同してしまいやすいので、即興でシーンを作る時は、ポジティブなシーンから始めるようアドバイスします。(特に初心者には。)

ポジティブなシーンから始めると、シーンは前へ進みます。そして、ネガティブなオファーが出されると、シーンは大きく変化します。しかし、初めからネガティブに始めると、シーンを劇的に変化させるのはなかなか難しいのです。観客自身も、ハッピーな主人公が、波乱に巻き込まれていく様を見たいのです。もちろん、ネガティブなシーンからでも始められます。その時は、役者の状態がポジティブである必要があり、役者の度量が求められます。

■Platform (プラットフォーム)

シーンの始まり。CRO(A)Wを使って、これをしっかり作ると、シーンを発展させやすい。

R

■Reincarnation(Reincorporation) / Shelved idea

Bringing back something from earlier in the scene.

—Glossary of BATS’ Improv Term

前のシーンで使った何かを後のシーンに生かす。棚に上げておいたことを持ってきて使う。シーンを終わらせる時に有効。

■Rule (ルール)

インプロでは、ゲームを使ってシーンを作るものが数多くあります。ゲームを使うことで、色々制約されます。「サ行を使わないで」「あいうえお順に話して」「相手に触れている時だけ話して」などなど。ゲームには色々なルールがあります。舞台の上で「何でもいいから面白いことやって」と言われて、すぐに出来る人は少数です。でも、ゲームを使えば、誰でも即興で演技が出来ます。

しかし、インプロのルールは、守ることが目的ではありません。ルールは良いシーンを作るためにあります。演技をする上で、自由になるためです。また、インプロのゲームは、フリースタイルで即興のお芝居を作るための練習でもあります。「これをしてはいけない」ということは「これさえすれば良い」ということになるので、初心者は楽になります。

でも、ルールを守れず間違えてしまったら、また新しいゲームが出来るかもしれません。ゲームは、間違えることで発展していくのです。

S

■Shall we? (シャルウィー)

即興実験学校のモットー「Give your partner a good time!」を学ぶのに、とても良いゲームです。一人は、「~しましょうか?」といった、質問形式でのオファーをします。もう一人は、その質問に対して、自分が本当にして欲しいことなら「はい」と、そうでなければ「いいえ」と答えます。「はい」か「いいえ」以外は、何も言いません。オファーをする側は、「はい」と言われたらそのことをし、「いいえ」と言われたら、また別のオファーをします。質問をする側は、相手に気持ち良く過ごしてもらうことを目指します。それに対して、質問に答える側は、そのオファーが、自分が本当にして欲しいことなのかを自問し、して欲しくなければ、はっきりとブロックして、リスク(責任)を負う、ということを学びます。

■Status (ステータス)

社会的な地位ではなく、人間関係としての上下関係。ハイステータス(支配する人)とローステータス(服従する人)がある。同ステータスの場合、ゲーム(張り合い)になりやすい。

■Spontaneity (自然に起こること)

自分の頭に、アイデアが浮かんでくるかどうか、ということに、自然に興味を持つこと。それが「Spontaneity」です。アイデアを搾り出そう、出そう、と自分がしているな、と思ったら、ブラインドオファーをして、誰か他の人の頭からアイデアを得ましょう。

「アイデアをむりやり出そうとしない!」これは即興において、一番大事なことであり、ビギナーにとっては一番受け入れにくいアドバイスです。なぜなら、ビギナーは、努力して、クリエイティブにならなければいけないと信じているからです。

即興者は、観客と同じ姿勢になるようにしましょう。観客には、見られているというプレッシャーがないから、「正しくなろう」とか、「尊敬されよう」とか、気にしなくていい。だから、自然に物事を正当化できるんです。そして、いいアイデアを搾り出そうと苦しんだり、かしこくなってやろうと必死になるよりも、正直で、素直でいよう、とすることのほうを、観客は誉めてあげたいと思うでしょう。

アイデアって何でしょうか?どうして、それが自分のアイデアだって言えるんでしょう?アイデアはあなたとは全く関係ありません。アイデアは、あなたの頭のどっかちがう所からの贈り物です。または、魂からの。そして、もしも、勝ち負けを気にしなかったら、あなたはなんの努力もせずに、お話を聞いている側のときのあなたのように、創造的になれるでしょう。

— Keith Johnstone “Don’t be prepared” Justification(正当化)

T

■Tilt (ティルト:傾き)

関係を変化させるオファー。また、その変化のこと。

V

■Vulnerable (傷付きやすさ)

「Vulnerable」には、「非難攻撃されやすい」「弱点のある」「(誘惑・非難などに)弱い、負けやすい」などの意味もあります。観客は、舞台の上で、Vulnerableな役者を見たいと思っています。それは、「ステータスが低く、常にハッピーで、鎧を付けていない、オープンでいる役者」ということです。舞台の上で起きる出来事に翻弄され、感じるままに感情を出し、どんどん変えられて行く役者を見ると、観客は、「こんなに傷付きやすい人を攻撃するなんて出来ない、守らなければ」と感じ、その役者を応援したくなるのです。逆に、傷付くことが怖くて、自分を守ろうと鎧を付けてしまうと、観客は非難攻撃して来るでしょう。

W

■Wide Eyes (ワイドアイ)

If we can be persuaded to relax our eyes, we are likely to become more open, and vulnerable, and uninhibited, and to arouse protective feeling in other people.

— Keith Johnstone “Impro for Storytellers” p.206

もし、目をリラックスさせることを覚えたら、もっとオープンになり、無防備になり、よそよそしさがなくなって、周りの人は守ってあげたいという気になるだろう。

その他

■30秒の法則

舞台の上で、役者が何かをやり始めたら、観客は興味を持って、その行為を観ます。しかし、ある程度観て、その行為の後、「何も起きない」ということが判ると、飽きてしまいます。役者は、次に何をするのか判らない恐怖と、それを観客に悟られる恐怖から、次々と新しい行為を行うでしょう。でも、そうすると、今度は早すぎて、観客は理解がついていかず、やはり飽きてしまいます。Keithは、「30秒に一度、何かを起こせば良い」と言っています。観客の興味が続くのは、だいたい30秒くらいというわけです。しかし、素晴らしい役者は、同じ行為で、観客の興味を何分も持続させることが出来ます。それは、先を恐れず、「今」を生きているからです。

■物語の構造

物語の基本構造は、「始め・中・終わり」となっています。「始め」は、物語の設定を描くプラットフォーム。「中」では、出来事が起こります。その出来事のパターンには、大きく分けて、2つあります。1つは、「知らないところに何かが行く」という物語。もう1つは、「ここに、知らない何かが来る」という物語です。昔話で言えば、前者は、「浦島太郎」、後者は、「かぐや姫」です。最後の「終わり」は、物語のエンディング。ハッピーエンドか、バッドエンドの終わり方があります。どの物語にも、必ず、この基本構造があり、誰もが感覚的に知っていることなので、これがないと、観客は、期待を裏切られた感じを受けます。しかし、逆に言えば、そこを狙って、策略的に観客を裏切ることも出来ます。

■ぬいぐるみ

ぬいぐるみは、とても素晴らしいインプロバイザーです。決してブロックをせず、全てをアクセプトします。暴力シーンやラブシーンにも、果敢に挑戦し、逃げません。ぬいぐるみとシーンを行う場合、いくつかのポイントがあります。目があり、顔があるぬいぐるみの方が、一緒にシーンをつくりやすいでしょう。観客も、シーンに入り込みやすくなります。また、ぬいぐるみがしゃべる場合、物陰に隠れたり、後ろを向いたりして話す方が良いでしょう。観客に、役者が話しているところが見えてしまうと、シーンに入り込めなくなるからです。そして、タッチングのあるシーンの方が、ぬいぐるみに細かい演技をさせやすく、より深みのあるシーンが演じられるでしょう。

 

ストーリーを壊すテクニック

「ストーリーを壊すよくあるテクニック」として、Keithがあげている項目が16個あります。
(「Impro for Storytellers」より)ここでは、代表的な8個を取り上げています。

■Blocking (ブロッキング)

「Blocking」とは、ノーと言ったり、その他どんなやり方であれ、オファーを否定することです。アイデアを殺した時、「Blocking」しています。「つまらなくする」達人は、何の考えもなしにアイデアを「Blocking」します。初心者は「ノー」と言う答えが「Blocking」と考えがちですが、それは間違いです。「Blocking」は、言葉の上での否定ではなく、態度や感情、行動なども含まれます。また、キャラクターとして、「Blocking」を使うのは、役作りとして効果的ですが、実際には、プレイヤー自身が、舞台上で観られている恐怖のために、「Blocking」してしまうことが多いのです。

■Negativity (ネガティブになる)

「Negativity」とは、消極的にアイデアを受け入れたり、消極的なオファーを出すことです。自分自身が困難に巻き込まれることを恐れているために起きます。例えば、「森の中でモンスターに出会った。」時、「モンスターは蟻くらいの大きさだった。」として、恐怖に立ち向かうことを回避してしまう場合などです。舞台上の物語の中で危険な目に遭った時、役者自身がネガティブな状態であると、直面することを避けがちです。もちろん、物語を盛り上げるために、主人公に困難を与えることは必要です。また、演じているキャラクター自身がネガティブである場合もあります。しかし、それは、役者がネガティブになることとは違うのです。

■Wimp (ウィンプ)

「卑怯者」という意味ですが、コントロールの責任を放棄することです。ドライビングとは対照的な行為になります。オープンオファーをし続け、はっきりさせず、何も決めない。責任逃れです。オープンオファーは、相手に決めさせてあげる、という好意的な行為ですが、これをやり続けると、相手は、自分ばかりが全てを決めなくてはならず、重荷になります。とくに、あいまいさを好む日本人には、「決める」ことは、責任の重い行為でしょう。聞いた話では、アメリカ人のシーンでは、全員が主役になり、日本人のシーンでは、誰も主役にならないことが多いそうです。

■Cancel (取り消す)

役者が、「Blocking」、「Negativety」、「Wimp」などをしなくなってきたら、次に「Cancel」を始めます。「Cancel」は、築き上げた全てのことを壊してしまいます。主人公が裏切られるのを観て、観客は一時的には笑うでしょうが、物語が進まず、何も発展しない、という犠牲は楽しめません。物語の途中で、無意味に「Cancel」が何度も起きると、観客は、そのストーリーへの興味を失ってしまいます。愛の告白の後、「な~んちゃって!」「うそだよ~ん!」「冗談冗談。」なんて何度も言われたら、信じられないでしょう?もちろん、主人公に葛藤や欲求不満を起こさせるためや、物語の最後のオチに使うなど、効果的な使い方もあります。意識的に使うことが大切なのです。

■Joining (同調する)

相手のオファーを受け入れているつもりでも、物語が進まないのが「Joining」です。相手のオファーを受け入れているので、シーンが上手く行っているように思いますが、それは勘違いです。全てのオファーに同調することで、物語が変化するのを止めてしまいます。セリフだけでなく、ステータスや感情、行動など、全てにおいて「Joining」は起こります。例えば、ステータスが同じ場合は、争いになりやすく、感情や行動が同じ場合は、ウィンプが起こりやすくなります。

■Gossiping (無駄話)

ゴシップ。日本語でも、そのまま使われています。現在のこと以外の、あらゆることについて話すことです。ゴシップを話しているとき、その役者たちは、そこにはいない誰か別の人のことか、別の場所のこと、過去のことなどを話しています。そうすると、相手やシーンに関わり合うことが出来ず、ストーリーが進みません。しかし、相手やシーンに関わり合うための導入として、利用することが出来ます。

■Bridging (橋を架ける)

「Bridging」とは、たった一歩で越えられる水たまりの上に、橋を架けるようなものです。例えば、重大なミスをした部下に「君はクビだ」と告げるべき時に、くどくどと理由をあげつらい、なかなかシーンを先に進めなかったり。観客は、先が見えすぎてしまうと、シーンへの興味を失ってしまうのです。もちろん、効果的に使えば、クライマックスを盛り上げたり、サスペンスを作り上げたりできます。

■Looping (堂々巡り)

「Looping」とは、物語を前に進める代わりに、すでにしていることを繰り返すことです。図書館で本を読んでいる。次に新しい本を読み始める。また違う本を・・・。というふうに。観客は、物語が進むことを望んでいます。行為をどんなに変えても、物語が進まなければ意味がありません。役者は、観客の期待を知っているので、プレッシャーを感じてしまいます。同じ行為を繰り返すことで安心しようとするのです。しかし、総体的に言えば、役者が舞台上で行っていることは、全て「Looping」です。観客の興味が持続するまで繰り返して、その間に次の行為を始めれば良いのです。

■Being Original (独創的になる)

「独創的」という言葉は、通常は肯定的な意味で使われます。特に、役者にとって、それはホメ言葉です。「君は独創的だ。」「オリジナリティがある。」などなど。しかし、「独創的」とは、無理に作り上げる物ではありません。「Being Original」とは、独創的であろうとして、かえってステレオタイプの独創性にはまってしまうことです。誰もが描いている、独創的なことをやると、みんな同じになってしまい、まったく「独創的」ではありません。それよりも、普通であろうとする方が、人それぞれ、違った表現になり、結果的に「独創的」になるのです。

ゲーム

■What Comes Next? (次、何をしますか?)

即興実験学校でベースにしているゲームです。このゲームで役者が行う仕事はひとつだけ。舞台の上で「次、何をしますか?」と指示者に聞いて、言われたことを演じる。舞台に立つ役者は、一人が基本です。出来た話がつまらなくても、それは、舞台に立っている役者のせいではありません。なぜなら、言われたことをやっているだけだからです。このゲームは、観客が物語に何を求めているのかを役者が知るのに最適のゲームです。大切なのは、起こったことを分析することです。ただやるだけでは、何の効果もありません。

●基本 一人の役者が舞台上で「次、何しますか?」と聞き、他の出演していない役者全員が指示を出します。

●2人で 男性と女性の役者が舞台に出ます。観客にも参加してもらい、同性の役者に対し指示を出します。

●委員会 指示を出す役者を3人、観客の前で、舞台に向かって座らせます。彼らが出した指示を観客が「良い、普通、悪い」の3段階で評価します。即興実験学校では、良い(いえ~い)、普通(う~ん)、悪い(え~)と表現しています。

●悪魔の声 自分の普段使わない低い声で、悪魔の声を作ります。悪魔に「次、何をしますか?」と聞き、悪魔の声で自分に指示を出します。一人芝居です。

●天使の声 自分の普段使わない高い声で、天使の声を作ります。やり方は、悪魔の声と同様です。即興実験学校で出来たゲームです。

■Hat Game (ハットゲーム)

帽子を使ったゲームです。「ハット」ゲームですので、野球帽やベレー帽のような帽子は使えません。ソフト帽タイプの帽子を使います。かぶり方も重要で、あまり深くかぶらず、帽子の頭の部分をへこませ、取りやすいように整えます。帽子を取るときは、そのへこませた部分を利用して掴みます。つばを掴むと、目を突いたりして、危険だからです。

帽子を使うと、意識が帽子へ分散されるので、シーンをよくしよう、とか、何を言おう、といったことに使う気が減ります。即興で演じる際に、舞台に立つ恐怖を減らす手助けになるのです。ただし、帽子のことばかりに気を取られていると、シーンが成り立ちません。そのために、まずは、危険に飛び込む練習(サムライ)や、帽子を取られることに対する執着を減らす練習(交換)で、慣らしていきます。

●サムライ 二人組で、お互いの肩に手が届くくらいの距離で向かい合います。相手に先に触った方が勝ち。

●交換 二人組で、交互にやります。まず、自分の帽子を取って、相手の帽子を取ってかぶります。そして、自分の帽子を相手にかぶせます。(ハットゲームを行う前の練習です。)

●取る 帽子をかぶってシーンを演じながら、相手の帽子を取った方が勝ち。

●かぶせる 帽子をかぶってシーンを演じながら、相手に自分の帽子をかぶせた方が勝ち。

●バンパイア 帽子なしで行います。相手の首筋にかみついた方が勝ち。

■Arms (二人羽織)

宴会芸などでやる、アレです。一人が両腕を後ろ手に組み、なるべく腕が隠れるようにします。その人の脇から、腕役の人が両腕を出します。セリフを話す人と、手の動きを担当する人に分かれることで、リスクを半減し、「協力する」ということを具体的に感じることが出来るゲームです。また、二人でひとりの人間になっている図が、それだけで笑いを呼ぶので、楽に舞台に立つことが出来ます。その反面、コメディのシーンになりがちなのですが、今回の即興実験学校では、シリアスなシーンも作ることが出来、大収穫でした。

●準備運動 二人羽織になって、服を直したり、髪を触ったり、してみます。二人で一人の人間になってるカンジを感じてみます。

●パーティー 二人羽織で同窓会などのシーンを演じます。握手をしたり、ハグをしたり。ただし、二人羽織では、横を向くと二人が重なってる様が不自然なので、シーンを演じる時は横を向きません。

●教師 観客を生徒として扱い、授業を行います。初めは、授業が終わるシーンを演じて、慣れたら授業を行います。

●ポケット 腕役の人がポケットに何かを忍ばせておき、それを取り出し、セリフを話す人に見せます。そこから浮かんだアイデアで、シーンを作って行きます。

●巨人 脚役の人が、脚を地面に付け、膝が曲がるようにして、長椅子の上に寝ます。上半身役の人が、脚役の人の腰当たりに、またいで立ちます。腰に布などを巻き、一体感を出します。

●小人 前に立つ人は、両腕に長靴を履かせます。後ろの人は、前の人の脇の後ろから手を出します。長靴が付く高さにテーブルなどを置き、脚を隠します。

■One Voice (ワンボイス)

複数の人数で、同時に同じ言葉を言います。初心者のための素晴らしいゲームです。ワンワードというゲームから派生しました。全員で同じ言葉を話すとき、誰かがリードすると簡単だと思われるかもしれませんが、このゲームで大切なのは「協力」です。一人が独創的なことを言ったり、大声でリードしても、何も得られません。それよりも、全員が、あたりまえのことを同時に言おうと一生懸命になることで、無防備になり、失敗しても観客は好感を抱きます。このゲームは、人数が増えれば増えるほど、一人の責任が減るので簡単になります。

●練習 一人がリーダーとして、グループの前に座ります。簡単なことを言って、言葉を誘導します。リーダーを交代しながら、ワンボイスを練習していきます。

●男の子女の子 男性のグループ、女性のグループで分かれ、両端の壁にそって並びます。それぞれティーンエイジの男の子、女の子として、シーンを行います。相手が判らないことを言ったときは、「何?」と聞き返します。

●パーティー ワンボイスで同窓会などのシーンを演じます。自己紹介をしたり、相手の近状を尋ねたりします。

●博士 何でも知ってる物知り博士として登場し、観客からの質問にワンボイスで答えます。

●家族 それぞれ10人ずつで、母親、父親、そして、息子か娘になり、深夜に遅く帰ってくる子供を叱ります。

■Once upon a time (むかしむかし)

これさえあれば、簡単にお話が作れる、インスタントストーリーフォーマットです。ニューヨークの作家、Kenn Adams氏の発明だそうです。このフォーマットの後に、思いつく話を続けて、物語を作っていきます。即興では、物語を終わらせることが、なかなか難しいのですが、これを使えば、大丈夫です。このフォーマットの最後に、「教訓」などを付けて、イソップ物語風にすることも出来ます。

Once upon a time …  (むかしむかし、あるところに・・・)

Every day …   (毎日、毎日・・・)

Until one day …   (ところが、ある日・・・)

Because of that …   (そのために・・・)  ※2~4回繰り返す。

Until finally …   (そして、ついには・・・)

Ever since that day … (それ以来・・・)

■Freeze Tag (フリーズタッグ)

シーン中に、「フリーズ」と声を掛けると、役者たちは静止します。シーン中の誰かと交代し、同じ体の形から、まったく違うシーンを始めるゲームです。今回、即興実験学校で行った「ニューフリーズタッグ(仮)」では、この制約をもう少し拡げて、入れ替わるだけでなく、ただ加わったり、不要な人を省いていったりしても良い、というルールにしました。また、その形式でロングフォームをやってみると、体の動きに幅が出るようです。

■Life Game (ライフゲーム)

Keith Johnstone によって考案されたショーのフォーマットのひとつで、ライセンスがあり、International Theatresports Institute(ITI:国際シアタースポーツ協会)によって、管理されています。

あらかじめゲストを決めておき、ショーの全ては、ゲストをもてなすために行います。「Honor the Guest(ゲストを讃える)」がモットーです。最低必要な役割は、ゲストをもてなすホスト役となるインタビュアー、ゲスト役を務める役者(ゲストが選んでおきます。)とその他の役者、シーンを作るディレクター、ゲストが控えている間お世話をする係り、そして、もちろんゲストです。

インタビュアーが、ゲストの話を聞きだし、ディレクターは、ゲストの人生の一部分を借りて、そこからインスパイアされたシーンを作ります。このゲームは、治療ではないので、ゲストの話をそのまま再現することはありません。ゲストの真実の話を元にすることで、即興でも、リアリティのあるシーンが作れるのです。まず、グループ内で練習することで、メンバー同士の理解が深まり、より信頼関係が深まります。

■Shaping (シェイピング)

「シェイプする=形作る」で、「調教」と訳してみました。このゲームは、イメージとしては、いるかの調教のようなゲームです。二人組で、調教する側は、相手のして欲しいことを頭に思い浮かべます。調教される側は、色々動いて、調教師の思い浮かべてることを探ります。調教師が出来ることは、ただひとつ。相手が思い浮かべてることに近いことをした時に、一言「リン」と、口でベルを鳴らすだけ。もしも、その通りのことをしたら、「リンリンリンリン!」と、盛大に鳴らします。

調教する場合、二つの方法があります。一つは、して欲しくないことをした時に叱る、という方法。そして、もう一つが、このシェイピングゲームのように、して欲しいことをした時に褒める、という方法です。子どものしつけならば、前者が有効でしょう。しかし、成長していくにつれて、人は、後者の方法の方が、より学びが早いのではないでしょうか。

■Word at a time (ワンワード)

一人が一語ずつ話し、複数の人数で、文章を作って行きます。次に自分の番がくるまでに、どんな文章になるのか判らないので、次の言葉を考えることは出来ません。また、他の人が言ったことを良く聞いていないと、文章がおかしくなってしまいます。その結果、役者たちは、「未来」を決められず、「今」を生きることになり、本当の人生と同じように、物語を進めることが出来ます。

●冒険(練習) 1人組で、森に冒険に出掛け、危険に出逢い、逃げる。

●冒険(練習2) 2人組で、森に冒険に出掛け、危険に出逢い、逃げるか、戦う(勝つか負けるかをハッキリ決める)。

●目を閉じる12人組で、1人が目を閉じて行う。目を開けている方は、相手が危なくないよう、サポートしながら行う。

●目を閉じる22人組で、2人とも目を閉じて行う。危なくないよう、他の人が、2人をサポートする。効果音などで、五感を刺激することで、イメージのサポートも行う。

●手紙 4人くらいで、手紙(またはお話)を書く。

●ワンワードサークル 6~8人くらいで円になり、ワンワードで「物語」を作る。言葉につまったり、意味がつながらなかったりしたプレイヤーは、円から外れる。

●リズム リズミカルに手を打って、リズムに乗って言葉を言う。

●ランダム 指された人が、次の言葉を加え、次に言う人を指さす。

●形容詞・しかし禁止 ウィンプ(はっきり決めないこと)を禁止するために、「形容詞」や「しかし」と言うのを禁止する。

■Two Dots (トゥードッツ)

二人組で行う、絵のゲームです。まず紙に、二つの点を書きます。これを目として、そこから顔をつくっていきます。理由は、「何の絵でも良い」と、無制限にするより、描きやすいからです。まず、一人が一筆描き、次の人がそれに一筆付け加えます。それを交互に繰り返し、絵が完成したと思ったら、その絵に名前を付けてあげます。名前を付ける時も、一文字ずつです。

このゲームは、その人の性格が目に見えてあらわれ、しかも、どんな絵になっても失敗がない、という素晴らしいゲームです。ただ普通に行うだけでなく、お互い自分の絵にしようとしたり、相手の絵にしようとしたり、といった制限を付け、楽しむことも出来ます。

■Fast Food Laban (ファーストフード ラーバン)

Laban(Rudolf von Laban, 1879-1958)は、ダンスなどで使われているムーブメントの理論です。正式なものは、ロンドンにあるLaban Centre Londonで学べますが、このFast Food Labanでは、それをお手軽にやってしまおう、というものです。正式なものには沢山ある動きの質のうち、重さ(重い-軽い)、空間(直接-直接でない)、速度(速い-遅い)の3つを使います。それぞれ組み合わせることで、普段の自分とは違う動きを作り出すことができ、様々なキャラクターになることが出来ます。

■他己紹介

自己紹介系ゲームのひとつです。二人組になり、お互いに自己紹介をします。その後、全員に相手の紹介をします。この時、「こちらは、○○さんです。」と紹介するより、相手を演じて、「私は○○です。」と紹介する方が、より演劇的になります。相手に紹介してもらうことで、自己紹介した内容のどこが伝わりにくかったか、相手がどこをポイントと捉えたか、などが判ります。また、直接話すことで、少なくとも一人とは知り合うことが出来ます。

■More or Less (モア オア レス)

ショーのフォーマットの一つです。アイデアのあるプレイヤーがディレクターになり、短いシーンを作ります。シーンが終わった後、お客さんに、その話の続きを見たければ「モア」、もう見たくなければ「レス」と叫んでもらいます。「モア」が多ければ、そのシーンの続きを作り、「レス」が多ければ、違うプレイヤーが、違うシーンを作ります。つまり、面白ければ続きが見られ、つまらなければ、打ち切られる、というわけです。このフォーマットは、ルースムースでつくられたものですが、オープンフォーマットで、権利が掛かっていないので、使う人が使い勝手がいいように、どんどん変えて良いそうです。

■ジャンル+タイトル くじびき

ゴリラシアター(c)が出来る前に、Loose Mooseで行っていたフォーマットです。ジャンルとタイトルを書いたくじをそれぞれ引き、そこから出てきたアイデアを元にシーンを作って行きます。ジャンルは判りやすいので、誰もがイメージを共有することが出来ます。また、ジャンルを研究するには、何度も見ることの出来る、映画が便利です。BATSでも、映画の研究を行っているそうです。